研究拠点群形成プロジェクト深層学習の予測に基づいた新規機能性化合物創成と検証

本研究プロジェクトでは、深層学習(ディープラーニング)を用いた計算化学・有機合成化学・機能性評価の融合により、機能性分子の設計~検証までを一括して実現するイノベーションサイクル創出のための研究拠点形成を行っています。研究概要

研究概要

深層学習の予測に基づいた新規機能性化合物創成と検証
(研究実施期間: 平成29年度(2017年)~平成33年度(2021年) )

 機能分子開発や創薬を行う既存手法は、(1)既存の物質を参考にして、それらが持つ機能の向上を目指した分子設計と標的分子の創出、(2)標的分子の合成経路設計とそれに基づいた試行錯誤的合成実験、(3)合成された化合物の機能評価やそれを用いたバイオアッセイ、の 3 段階に分かれる。しかしながら、それらを研究する研究者間の有機的な関連は、疎であることが多い。例えば、理論計算を用いると化合物の機能予測やそれらの合成可能性検討は可能であるが、対象化合物の実際の合成や機能評価はできない。有機合成化学者は標的化合物を合成できるが、自らが設計した分子の機能については予測困難である。分子機能評価を行う物理化学者は、一般的に分子の合成は得意ではないため、さらなる分子の改良が困難である。異分野の研究者がチームを組み拠点形成すれば、この弱点は克服できる。
 本プロジェクトの特徴は、多くの実験事実を多層構造のニューラルネットワークを用いて機械学習(ディープラーニング、深層学習)させ、得られた結果を用いて機能性分子の探索や創薬を行うことである。単に既知のデータを用いた深層学習により予測するだけではなく、それらを実際に合成しそれらの機能を科学計測またはバイオアッセイにより評価する。これにより「機能分子創成イノベーションサイクル」を創り出す。 本プロジェクトでは、計算化学、有機合成化学及び分子機能の計測を専門とする研究者を、理論計算等により機能性分子を設計する【計算・創薬グループ(Gr)】、光機能性分子の【光 Gr】、合成反応開拓を軸とした薬物を含む機能性分子を合成する【合成 Gr】にグループ化する。更に、それぞれの研究者の持つアイディアをグループ間の協働により形とし産業界に新たな機能物質を提案する「深層学習の予測に基づいた新規機能性化合物創成と検証」研究を行うとともに、イノベーションサイクル研究拠点形成を行うことを目的とした。

深層学習とは?

深層学習(ディープラーニング)

深層学習(ディープラーニング)は、複数のニューラルネットワークを階層的に組み合わせたモデルを用いて機械学習させることで、より複雑な情報の認識や分類を行うことを目的としたものです。本研究プロジェクトでは、深層学習のモデルとして畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を利用し、数百以上の化学構造記述子と分子機能を結びつけることで、新規機能性化合物の創成を行っています。

研究実施体制

研究開発実施体制

各研究グループ間の有機的な連携により柔軟な研究開発を実施しています。